SP27 肺挫傷
- 肺の病気
病態と定義
肺挫傷とは非穿通傷や胸壁への圧迫—減圧損傷から二次的に生じる、解剖学的ならびに生理学的な肺病変である1。肺挫傷が生じる正確な機序は明確ではないが、重症で急な胸部の加圧と減圧による間接的な衝撃が、血管と肺胞の間に高い圧勾配を構築し、直接的な肺の外傷を伴わずに、びまん性の間質性肺出血を生じさせるとされている2-5。最初の傷害は間質および肺胞出血を直ちに誘発させる毛細血管と小血管の破壊であり、受傷1〜2時間後で明らかな水分の蓄積すなわち浮腫と単核および多形核細胞の軽度な浸潤が肺の間質で生じる6-8。小破壊では肺胞の構造はそのままで残される。受傷後約24時間で多量の炎症性細胞(主に単核細胞)の集積、フィブリン、赤血球によって肺構造を消し去るような顕著な細胞性の反応が生じる6,8,9。48時間ではさらに多量のフィブリン、細胞の残渣、Ⅱ型肺胞細胞からの顆粒、および炎症性細胞が認められる。リンパ管は拡張し、蛋白で満たされる。このように進行性の肺傷害が、胸部損傷を受けた24〜48時間後に悪化する6,10。胸部損傷直後は、肺機能に問題がないように見えていた動物が、急に呼吸状態が悪化し致命的な状況になることが、このような病態生理により説明できる。胸部損傷とは、自動車事故や落下などの鈍的傷害、またはナイフなどの穿通傷も含むが、肺挫傷は主に前者によって生じる。