犬・猫の呼吸器病

SP25 肺葉捻転

  • 肺の病気

病態と定義

肺葉の茎部中心として気管支および血管を含む肺葉が長軸方向に捻転する。それにより静脈の血流が著しく障害され、動脈はその後もしばらくは血流を維持するため捻転した肺葉はうっ血し、液体が間質組織や気道に移動すると硬変する。一般的に肺葉捻転は、徐々に進行してその発現は急激である。部分的な肺の拡張あるいは拡張不全後に肺は胸壁の動きによってその位置を変化させる。捻転した肺葉は、うっ血肺胞には液体成分が充満し、さらに肺胞表面からの液体漏出が促進して胸膜漏出および癒着などを併発する。長期間の肺葉捻転は、肉芽組織の増生、線維化、胸膜癒着が認められる。さらには縦隔気腫や気胸を伴う気管支破裂などの合併症が増加する。発生部位では、右肺中葉と左肺前葉に多く報告されている12。右肺中葉と右肺前葉が同時に捻転する場合もある。左肺前葉で小型犬に多い3。左右の後葉は解剖学的にしっかりと固定されているため発生は稀である。捻転の方向は、時計回りおよび反時計回りのどちらもあり、角度も90°から580°までとかなり幅広い。

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