SP09 特発性間質性肺炎
- 肺の病気
病態と定義
特発性間質性肺炎(IIPs)は、間質性肺疾患(Interstitial Lung Diseases, ILDs)のひとつのグループである。ILDsはびまん性肺疾患とも呼ばれ、様々な炎症と線維化のパターンによって特徴づけられる非感染性、非腫瘍性疾患の多様性に富む疾患群である1。犬と猫のILDsは、人のILDsの基準2にちなんで、IIPs、既知の原因に起因するILDs、その他のILDsの3つの主要な群からなるものとして近年提唱された1,3(図1)。ILDsは、末梢気道・肺実質疾患のひとつのカテゴリーであり、血液–ガス境界領域の肥厚や線維化が生じ肺胞での酸素化能が低下し、拡散障害により肺胞気動脈血酸素分圧較差の開大が認められる(総論参照)。また、間質に存在する肺Cファイバー受容体を刺激し過換気を引き起こすが、一方で咳中枢には咳抑制に作用する。臨床所見は、急性の場合は頻呼吸、低酸素血症かつ低二酸化炭素血症、および肺野すりガラス様陰影、慢性の場合は持続性の多呼吸や努力呼吸、運動不耐性、びまん性間質影、および低酸素血症かつ低二酸化炭素血症を示す。気道系が関与すれば咳を伴うがILDsには主要所見ではない。病理組織パターンは、通常間質性肺炎(Usual interstitial pneumonia, UIP)、非特異性間質性肺炎(Nonspecific interstitial pneumonia, NSIP)、器質化肺炎(Organizing pneumonia, OP)、びまん性肺胞障害(Diffuse alveolar damage, DAD)、に分類され、NSIPはさらに細胞性(cellular)と線維化性(fibrosing)に分けられる。これらは単一所見というより、肺野全体でもっとも多く占めるパターンで表現される。各種疾患はこの病理組織パターンのいずれかで表現される(表1)。
図1 犬と猫の間質性肺疾患(ILDs)の分類(文献1-Reiniro2019, Fig1より転載、一部改変)。IIPs–特発性間質性肺炎; ILD–間質性肺疾患; NSIP–非特異性間質性肺炎; AIP–急性間質性肺炎; COP–特発性器質化性肺炎; HP–過敏性肺炎; EP–好酸球性肺炎; PAP–肺胞たんぱく症; DAHーびまん性肺胞出血; LPー脂質/リポイド肺炎; PHー肺ヒアリン症; LCH/PLCHーランゲルハンスの細胞組織球症/肺ランゲルハンスの細胞組織球症; PAMー肺胞微石症。
IIPs – idiopathic interstitial pneumonias; ILD – interstitial lung disease; NSIP – non-specific interstitial pneumonia; LIP – lymphocytic interstitial pneumonitis; AIP – acute interstitial pneumonia; COP – cryptogenic organizing pneumonia; HP – hypersensitivity pneumonia; EP – eosinophilic pneumonia; PAP – pulmonary alveolar proteinosis; DAH – diffuse alveolar hemorrhage; LP – lipid/lipoid pneumonia; PH – pulmonary hyalinosis; LCH/PLCH – Langerhans’cellhistiocytosis/pulmonary Langerhans’cell histiocytosis; PAM – pulmonary alveolar microlithiasis.