SP01 犬の慢性気管支炎
- 気管支の病気
病態と定義
2ヶ月以上継続する執拗な咳を特徴とする慢性疾患である。犬の慢性気管支炎は、過去1年間に少なくとも2ヶ月間連続して、慢性か再発性の気管支由来粘液産生過剰を示した状態と定義されている1。したがって、気管支鏡検査にて気道の慢性炎症および、粘稠な粘液や粘液膿性物質が観察される1-3。通常、気道は正常な線毛運動、正常な粘液分泌、効率的な側副換気および効果的な咳などの、肺の防御機構で保護されている4。慢性的な気管支の炎症によって気道に障害が生じた場合、気道壁が肥厚し、気管支の内腔が狭くなることで病態が悪化する(図1-総論図10)。そのように進行すれば、不可逆性の気流制限を示すようになる。その段階は一般に慢性閉塞性肺疾患1(COPD、SP02)と呼ばれる。また犬では、気管支拡張症(SP06、SP33)の状態になることもある。
図1 末梢気道における気流制限の機序。