第15回 犬・猫の呼吸器勉強会
- お知らせ
- 勉強会
第15回 犬・猫の呼吸器勉強会
日時: 令和4年4月11日(月)21:00−23:00
会場: オンライン開催
内容
1 呼吸器総論 座長:飯野亮太(いいのペットクリニック)
犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅢ 身体検査(視診、聴診、触診、打診)
城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
10年以上呼吸器専門診療を継続してきた経験に準じて作成した犬・猫の呼吸器科の診療データベースのシートを用い、麻酔を行わない一次検査の手順による診断アプローチを紹介し、今後当研究会での呼吸器診療の診療基準の試案を検討していく。前回に引き続き、身体検査(視診、聴診、触診、打診)の手順について紹介する。今回は、鼻汁と鼻出血について概説する。
2 研究班報告(診療基準班) 座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
ネブライザー療法
1)エアロゾルの特性、機材の種類、薬剤調合時の注意点-人医の常識とは?
平林雅和(オールペットクリニック)
ネブライザー療法は吸入療法のひとつであり、人医では耳鼻咽喉科を中心に70年前より基礎研究や実践経験が積まれている。獣医学臨床でも実践されているが、基礎研究や臨床研究は十分でなく、その適用は経験的にとどまっている。今回、城下先生の執筆された「ネブライザー療法とは」(CLINIC NOTE、No78、2012年1月発刊)の再検討を目的に、人医領域での文献等107本の情報を中心に、オムロンヘルスケア株式会社のインタビュー実施や、獣医臨床領域のWeb情報など入手可能なものも参考に含め、ネブライザー療法の原理原則の「基礎知識」からネブライザータイプや使用薬剤の「実践知識」において知見を整理してみた。今回の報告が獣医学臨床における「ネブライザー療法」の新たな発展に貢献できば幸いである。
2)獣医学分野における文献レビュー
谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院)
ネブライザー療法は人医療において多くの疾患で有効性が証明されており、獣医療でもネブライザー療法を支持する報告は多くある一方で、その使用方法は経験的である。一般的にネブライザー 療法の治療成績は発生したエアロゾルに含まれる薬剤の効果よりも薬剤の沈着率に依存すると考えられている。エアロゾルの沈着に関与する因子として機器から発生するエアロゾルの特性、エアロゾルの伝達デバイスおよび動物の換気量が挙げられる。エアロゾルの特性はネブライザー装置の種類に依存し、エアロゾルの伝達については種々のデバイスや密閉されたケージ内での投与方法がある。さらに動物は自発的な強制吸気や息どめができないことから換気量を調整できず、適切なエアロゾルの吸入時間も経験的に決定されている。そこで今回、小動物医療におけるネブライザー療法のエアロゾル沈着に関するレビューおよび使用する薬剤と適応について報告する
3)ミニチュア・ダックスフンドの慢性特発性鼻炎に対し在宅ネブライザー療法で管理に成功した1例
城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
症例は、ミニチュア・ダックスフンド、避妊雌、10歳。1.5ヶ月続く慢性粘液膿性鼻汁、スターター、咳を主訴に来院。内視鏡検査にて喉頭の発赤、後鼻孔に粘液停滞、鼻腔内に器質的変化なく、鼻腔ブラッシング細胞診にてリンパ球少数で好中球主体、鼻粘膜生検にて腫瘍性および炎症性変化なくリンパ球浸潤なし、気管支鏡検査にて右中葉気管支内に白色粘液停滞あり。特発性に鼻腔内粘液停滞が認められ、慢性特発性鼻炎と診断した。特異的治療を見出せないため、在宅にてネブライザー療法のみ継続したところ、治療開始3ヶ月目で初期症状はほぼ改善した。同様に、慢性鼻汁・くしゃみ、喉頭性咳、睡眠呼吸障害、鼻鏡検査にて器質変化なくブラッシングと粘膜生検にてリンパ球浸潤なし、気管・気管支に粘液停滞を示す症候群を、慢性特発性鼻炎を定義し、この診断基準をみたす犬10例の転帰も紹介する。10例中6例でネブライザー療法を自宅で続け、症状の改善を確認した。
3 症例報告・臨床研究 座長:飯野亮太(いいのペットクリニック)
ネブライザー療法が効果を示した慢性鼻汁を呈した猫の10例
中森正也(乙訓どうぶつ病院)
ネブライザー療法は人医療において有効性が数多く報告されているが、獣医療ではその治療効果について定量的に評価されている報告は少ない。今回、2020〜2022年の2年間で当施設において経験した、慢性鼻汁を呈し抗生剤などの標準的な治療による改善が少なくとも2ヶ月以上認められなかった猫を対象にネブライザー療法を実施し治療効果の評価を試みた。評価はVAS(Visual analog scale)および飼い主の症状改善度を使用し、くしゃみ、鼻汁および鼻づまりおよび初期症状改善度に関して飼い主に聞き取り調査した。対象となったのは猫10例(雄1:雌9、年齢:1〜15歳)で、それぞれの最終診断は、X線、透視、CTおよび内視鏡検査にて、鼻腔内腫瘍2頭、慢性鼻炎6頭、鼻咽頭狭窄2頭であった。全例において鼻汁や鼻づまりは吸入開始12週より有意な減少を認めた(p<0.05)。ネブライザー療法は猫の慢性鼻汁の軽減に有効であると考えられた。
猫の難治性声門下および上部気管狭窄に対し自己拡張型金属ステント留置にて長期管理した1例
城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
声門下狭窄は犬や猫では逸話的情報にとどまる。ヒトでは発症率が年間0.71〜4.95人/10万人という稀な疾患であり、小児良性上気道閉塞や成人の気管切開後合併症の重要な鑑別疾患で、重度狭窄例では外科整復が適用となるが治療ガイドラインはなく、しばしば気管カニューレ長期管理となる。術後狭窄には多くはシリコンTチューブ留置で解決されるが、まれに自己拡張型金属ステント留置が試みられている。症例は雑種猫、10歳、避妊雌。声門下および上部気管狭窄と診断し、バルーン拡張術、シリコンTチューブ留置、喉頭気管部分切除術を施したが3ヶ月後再狭窄を来し、自己拡張型金属ステント留置を余儀なくされた。著明な初期改善効果が得られた。術後3ヶ月から肉芽組織形成、細菌感染、粘液停滞を経験し1〜3ヶ月毎の喉頭気管鏡検査にて適宜内視鏡処置、抗菌剤投与、在宅ネブライザー療法による管理が必要となったが、5年3ヶ月間、日常生活を支障なく過ごせた。
参加費: 研究会会員は無料。非会員は事前登録・事前振込3,000円(開催4日前までに振込完了)。非会員の方はオンラインミーティングの招待メールを事前に送信します。
連絡事項
- 非会員参加の場合、原則として事前申し込みをお願いします。4月3日までに研究会事務局(jimu@verms.or.jp)にご連絡ください
- 開場は20:30となります。入室許可手続きがありますので入室自体はお早めにお願いします。
- 待機室入室後、3分以上たっても承認されない場合、お手数ですが事務局046-256-4351までお電話ください。電話にて承認手続きを行わせていただきます。
- 各講演内容は研究会会員にYou Tubeにて限定公開いたします。その中のコメントを介し質疑応答可能です。
- 開催中、質問者は円滑な議論のためビデオオンでお願いします。
- 閉会後、同一会場にて23:15から歓談や飲食しながら討論会を60分程度設けます。参加や退出のタイミング自由です。症例相談があればデータ提示をお願いします。
第16回 犬・猫の呼吸器勉強会のご案内
日時: 令和4年6月13日(月)21:00−23:00
会場: オンライン開催
内容
1 呼吸器総論 座長:上田一徳(横浜山手犬猫医療センター)
犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅢ 身体検査(視診、聴診、触診、打診)
城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
2 研究班報告(FDLD班) 座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
肺内パーカッション換気(IPV)療法とは? (予定)
山下 弘太(ダクタリ動物病院東京医療センター)
3 症例報告・臨床研究 座長:上田一徳(横浜山手犬猫医療センター)
演題募集中。演題タイトルの締切は5月13日(金)となります。演題名、発表者名、所属を事務局(jimu@verms.jp)に連絡ください。発表者は会員である必要がありますが、共同発表者はその限りではありません。募集要項は以下の通りです。
1)症例報告:来院経緯、症状の動画データ、身体検査・血液検査・X線検査・透視検査・動脈血ガス分析などの一次検査所見、鑑別疾患リスト、CT検査、気管支鏡検査、鼻鏡検査、BALF解析や病理診断、確定診断、内科治療または外科治療、治療転帰、などの詳細データが全て揃っているもの。2)臨床研究:呼吸器学に関する知見。体裁は自由。他の学会で発表したものでもよいです。 1)2)とも発表10分、議論10分。1回開催につき、1〜2演題とさせていただきます。演題やスライド資料は当サイト(会員限定コンテンツ内)で公開いたします。
用語や基準は書籍「一般臨床医のための犬と猫の呼吸器疾患」に従います。