第13回 犬・猫の呼吸器勉強会
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第13回 犬・猫の呼吸器勉強会
日時: 令和3年12月13日(月)21:00−23:00
会場: オンライン開催
内容
1 呼吸器総論 座長:上田 一徳(横浜山手犬猫医療センター)
犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅢ 身体検査(視診、聴診、触診、打診):睡眠呼吸障害の解剖学的考察
城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)
7年以上呼吸器専門診療を継続してきた経験に準じて作成した犬・猫の呼吸器科の診療データベースのシートを用い、麻酔を行わない一次検査の手順による診断アプローチを紹介し、今後当研究会での呼吸器診療の診療基準の試案を検討していく。前回に引き続き、身体検査(視診、聴診、触診、打診)の手順について紹介する。今回は、犬の睡眠呼吸障害の解剖学的考察について述べる。
2 研究班報告(BAS班) 座長:城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)
一時的気管切開術の適応と術式、管理、合併症–気管切開ガイドライン作成にむけて–
福田 大介(大樹どうぶつ病院)
気管切開術の歴史は古く、人では16世紀から、上気道閉塞に対する重要な救命手段として認識されていた。現在では、ICUでの呼吸管理に欠くことのできない手技となっている。獣医領域においても、上気道閉塞により、窒息に苦しむ症例に遭遇することは珍しくない。これらの動物は、無処置では非心原性肺水腫や誤嚥性肺炎を合併し、急速に生命の危機に瀕する。このような状況では、周術期管理や救命緊急処置として、気管切開術により早急に気道確保する必要があるかもしれない。しかし、獣医領域ではいまだ広く行われておらず、それは気管切開に対する正確な情報の不足が根底にあり、実施に躊躇する臨床医が多いためと考えられる。そこで今回、獣医領域における気管切開術、特に一時的気管切開術について文献を調査し、適応と術式、管理、合併症についてまとめた。今回の報告をたたき台に、「気管切開ガイドライン」の作成に向けた議論ができれば幸いである。
3 症例報告・臨床研究 座長:上田 一徳(横浜山手犬猫医療センター)
1)Filaroides属肺虫症により 慢性咳と肺過膨張を呈した若齢犬の1例
飯野 亮太(いいのペットクリニック)15分
Filaroides属線虫は、特に若い個体において多巣性の間質性肺炎により、咳や呼吸困難を引き起こすことがあるが、今回、臨床的に慢性の咳と過膨張肺を呈した若齢犬の肺虫症の1例に遭遇したため、その概要を報告する。1歳1ヵ月齢、雌のトイ・プードルが約2ヵ月間持続する慢性の咳、呼吸困難により当院を受診。胸部x腺検査にて左側肺野の透過性亢進、横隔膜の平坦化、心臓の右側変位を認めたため、肺気腫などの嚢胞性肺疾患を疑った。第5病日、呼吸状態の悪化とともに両側性の過膨張肺を呈したため、酸素療法、気管支拡張剤、副腎皮質ホルモン剤を投与したところ、呼吸状態は安定し過膨張肺は改善された。第10病日、開胸下にて左側肺葉の無気肺および虚脱を認めたため左側肺葉全摘を行ったところ、病理組織検査にて気管支腔および肺実質内に複数の線虫が確認された。術後、駆虫薬投与を行い、咳は消失、呼吸状態も正常化した。
2)披裂部余剰粘膜切除が奏功した猫の喉頭狭窄の1例
城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)15分
猫でまれな閉塞性喉頭疾患を経験した。避妊メスの雑種猫が、1歳齢の保護時から異常呼吸音と努力呼吸が持続し、1歳2ヶ月齢時に精査をうけるも診断できず経過観察となるが次第に終日症状が生じ悲鳴が生じるようになり、2歳2ヶ月齢時に当院呼吸器科に精査加療のため受診。診察時に持続性高調吸気性異常音、透視検査で吸気時咽頭拡張、重度の高炭酸ガス血症(PaCO2 69.1 mmHg)、中程度の低酸素血症(PaO2 62 mmHg)を認め、喉頭鏡検査にて両側の披裂軟骨周囲に余剰な粘膜があり声門前部が狭窄していた。一時的気管切開管理となり第13および31病日に余剰粘膜切除を行い、経過中プレドゾロン1.0 mg/kg SC 1日1回を継続した。病理診断は結合織の増生からなる非腫瘍性病変であった。第38病日に抜管、第42病日に喉頭鏡検査にて声門の開口を確認し、呼吸症状の消失の確認ののちに第45病日退院となった。猫の同疾患の一報とヒト小児の披裂型喉頭軟化症の情報に照らし議論したい。