犬・猫の呼吸器病

U20 睡眠呼吸障害

  • 咽頭の病気

病態と定義

ヒトにおける睡眠障害1のうち、睡眠呼吸障害(Sleep-disordered breathing, SDB)とは睡眠時に生じる様々な呼吸の問題をこという。睡眠時無呼吸/低呼吸とは、完全な上気道閉塞や部分的な上気道閉塞のエピソードが睡眠時中に繰り返し生じることで、一回の持続時間は10秒以上と定められている1。睡眠時の咽頭気道閉塞や中枢性の無呼吸が発症機序となっている。睡眠時無呼吸症候群は睡眠呼吸障害に日中傾眠、中途覚醒、倦怠感を伴うものとされ2、確定診断にはさらに終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)にて睡眠時無呼吸/低呼吸のイベントが1時間に5回以上あることを確認する必要がある3。犬の睡眠時無呼吸はイングリッシュブルドッグでPSG検査で記録した基礎研究が2000年はじめまで行われ4-13、短命や突然死との関連が示唆されたが14、その後獣医臨床に応用されず、睡眠時無呼吸症候群の診断は一般化されなかった。犬の臨床ではPSG検査が困難なのでこの方法で睡眠時無呼吸を定量化することが難しい。そこで、その研究グループは、犬の臨床には、PSG検査を要さないSDBの診断名利用を提唱した15。その後、犬のSDBや睡眠時無呼吸の事例報告は多く認められる様になり16,17、近年では、SDBはいびき・断眠・ 睡眠中顎をあげるなどの徴候にもとづき症候群として学術報告の中で使用されるようになってきた18,19。最近ではSDBと臨床診断したキャバリアキングチャールズに対し全身圧プレチスモグラフィーと同時にビデオ撮影と録音を用いて睡眠時無呼吸/低呼吸を記録した報告がなされている18SDBの病態は、イングリッシュ・ブルドッグの睡眠研究に依存しており、短頭種気道症候群に代表される咽頭気道の解剖学問題が基本にあり、中枢性無呼吸も混在し、睡眠REM期にSDBが生じることがが分かっている144歳以上になりSDBの病状が進行していると上気道拡張筋群の機能が低下し代償不全の状態となり、症例によってはそれが不可逆性に進行し突然死の原因になりうる14SDBは、解剖学的問題以外にも、上気道を閉塞する後天的な病的器質障害でも生じるので、これらは区別が必要である。

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