U17 鼻咽頭腫瘤性病変
- 咽頭の病気
病態と定義
鼻咽頭内に発生する非腫瘍性の腫瘤性病変のことを指す1。咽頭粘液嚢胞2,3、ラトケ裂嚢胞(U19)4、咽頭膿瘍(U18, 図1)、咽頭扁桃の腫大1、炎症性ポリープ状病変など原因は様々であるが、症状は同じで、腫瘤が増大することで上気道閉塞が生じると、持続性低調スターター、いびきや睡眠呼吸障害などを呈する5。獣医学においてそれぞれの疾患の報告は散発的で、そこで、これら疾患群を鼻咽頭内腫瘤状病変と総じて分類する。鼻咽頭は、咽頭鼻部ともいわれる6,7。軟口蓋の上の呼吸部であり、鼻腔の後鼻孔から咽頭の咽頭内口までの空間であり7(総論 図2参照)、閉口した際の鼻呼吸の気道となる。鼻咽頭の前部は、腹側は硬口蓋、背は鋤骨、両外側は口蓋骨によって境界され、中部と後部は、背側を頭蓋基底とそれに接着する筋によって境界されているが、その腹側境界は可動性の長い軟口蓋である7。咽頭内口は軟口蓋の縁を越え、咽頭の口部と喉頭部内にへ向かう咽頭鼻部の開口である。咽頭鼻部に関係のある他の構造は、咽頭扁桃および耳管咽頭口である。咽頭扁桃は、鼻咽頭尾側背壁にあるリンパ上皮性器官である。鼻腔を通過した5-20μmの大きさのエアロゾールが鼻咽頭粘膜表面に嵌入し取り込まれ、嚥下されて気道から除去される8。咽頭扁桃は、このような異物に対し気道に到る前に免疫応答する役割がある。耳管咽頭口は、軟口蓋中部上の咽頭鼻部の各外側壁上に、ある。この開口部は翼状骨の後縁の直後に位置し、前腹側を向いている7。耳管は、中耳腔と咽頭鼻部の腔の間に伸びている。それは両側の鼓膜の気圧を等しくするのに役立つ7。
図1 犬の咽頭膿瘍。仰臥位で開口し軟口蓋をみている。軟口蓋右半分が膿瘍で脱落していた。