U14 軟口蓋過長症
- 咽頭の病気
病態と定義
軟口蓋は鼻咽頭の床と咽頭口部の蓋を形成する可動性の構造物1であり、小唾液腺組織で形成されている。軟口蓋は、吸気時に口腔を閉鎖し、嚥下時に鼻咽頭を閉鎖することで誤嚥を防いでいる(図1)。軟口蓋過長症は、閉鎖軟口蓋が喉頭蓋の先端を越えて気管側に伸展している状態2を示す。過長した軟口蓋は、吸気時に尾側へ牽引され、咽頭気道の背側を覆うことで気道閉塞を生じる。睡眠時には軟口蓋の振動により著しいいびき音が聴取される。短頭種気道症候群の86%(101/118)で軟口蓋過長が認められ3、イングリッシュブルドッグ、パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、ペキニーズ、狆などの短頭犬種には解剖学的な特徴といえるが、それ以外の非短頭犬種における軟口蓋過長症については調査研究がない。経験的には、比較的短頭に近い頭部骨格、小下顎症、咽頭背壁と軟口蓋の一体化4の要因が関連しており、動的頸部気管虚脱を合併していることが多いため気管虚脱と初期診断されていることが多い。
図1 犬の上気道。(城下幸仁. 犬・猫の呼吸器を診る(第1回) 呼吸器の基礎と体系、診断の過程. SA Medicine 2017;19:63-74. p2、図3より引用)