U08 慢性特発性鼻炎
- 鼻の病気
病態と定義
犬における炎症機序によらない鼻汁停滞である。ステロイドには反応しない。診断は徹底した鑑別疾患の除外による。重要な鑑別疾患は、リンパ形質細胞性鼻炎である。犬の鼻腔粘膜は直接外界と接し粘膜免疫系が発達し、他の気道に比べリンパ球や形質細胞が多い1。現在のリンパ形質細胞性鼻炎(LPR)の診断では、生理範囲と病的リンパ球浸潤の識別基準が示されていない。そこで慢性鼻炎の鑑別として、表1のように細胞診ブラシでの評価を加えると、鼻腔ブラッシング細胞診でリンパ球出現度合いに症例により違いがあることがわかり、細胞診および鼻粘膜生検ともにリンパ球浸潤の少ないものを慢性特発性鼻炎とみなし、どちらもリンパ球や形質細胞浸潤が強いものを鼻腔内で真にリンパ形質細胞性炎症が生じているものとしリンパ形質細胞性鼻炎と診断した。このように慢性特発性鼻炎(CIR)を分類する試みがなされた2。ここではその試みで挙げられた10例の概要を紹介する。
表1 鼻腔ブラッシング細胞診と鼻粘膜生検による慢性特発性鼻炎とリンパ形質細胞性鼻炎の識別基準