SP19 肺の石灰化
- 肺の病気
病態と定義
肺実質および肺内軟部組織に石灰沈着が生じることを指す。軟部組織に石灰化がみられるのは基本的には3つの病態生理学的な過程が存在する(図1)。
1) 異栄養性性石灰化:血漿カルシウム濃度とリン濃度が正常であるのに軟部組織にカルシウム塩が堆積する。一般的な異栄養性性石灰化はクッシング症候群で最も認められる1,2。その他にも過去の炎症、変性、感染と腫瘍の石灰化で認められる3,4。
2) 転移性石灰化は血漿カルシウム濃度とリン濃度に異常があるため正常な組織にカルシウム塩が堆積する。転移性石灰化のもっとも多い原因は腫瘍随伴症候群や、上皮小体機能亢進症に関連する骨の異化作用である5。
3) 特発性石灰化は病理学的な異常も認めず、血漿カルシウム濃度とリン濃度も正常である。大動脈などの血流の多い領域に認められる大動脈壁の石灰化は、病因はまだ立証されておらず特発性石灰化に分類される6。肺胞微石症も特発性石灰化に分類されているが、最近の報告では二次的に発症することが報告されている7-9。
表1 肺の石灰化(Berry CR, Tyson A, R. Thoracic mineralization In: King LG, ed. Textbook of Respiratory Diseases in Dogs and Cats. St.Louis: SAUNDERS, 2004;569-580. p571 BOX76-3より引用、一部改変)
●異栄養性性石灰化 |
クッシング症候群(後天性、医原性含む) |
加齢による変化-気管支壁の石灰化、胸膜および肺実質内の骨腫(骨化生) |
気管および気管支軟骨の石灰化 |
気管支壁の線状石灰化 |
血栓症歴と炎症の結果による肺動脈の石灰化(おもに犬糸状虫成虫駆除治療後に生じる) |
原発性肺腫瘍 |
骨肉腫の肺転移 |
真菌感染症後(ヒストプラズマ症) |
硫酸バリウム誤嚥 |
軟骨肉腫などの気管・気管支内腫瘍 |
●転移性石灰化 |
慢性腎不全に継発する間質と肺胞の石灰化(腎性二次性上皮小体機能亢進症) |
ビタミンD3殺鼠剤中毒による高カルシウム血症と広範な肺の石灰化 |
●特発性石灰化 |
肺胞微石症 |
硫酸バリウムの誤嚥性肺炎歴による肺胞沈着 |