SP12 急性間質性肺炎
- 肺の病気
病態と定義
急性間質性肺炎(Acute interstitial pneumonia: AIP)は急速進行性の経過をたどる原因不明の間質性肺炎と定義した臨床病理学的疾患概念である。急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome : ARDS)同様の臨床症状を呈するが、ARDSと異なり、発症の誘因(敗血症,肺感染症,外傷,薬剤など)は認めないため、特発性ARDSとも呼ばれている1。図1に、獣医領域で定義されたARDS(vetARDS)2とAIPの概念を比較した。臨床診断ではX線検査でびまん性肺浸潤影を認める場合に、急性発症であれば特発性器質化肺炎あるいは急性間質性肺炎を疑う3(図2)。病理組織学的にはびまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)と同様の所見を認めるが、組織傷害の可逆性が特徴的な病変であり,慢性かつ進行性の経過を認めるUIP(usual interstitial pneumonia)パターンを呈する特発性肺線維症とは区別して考えられている。また、AIPの症例が慢性化し、特発性肺線維症に移行することはないと考えられているが、再発を繰り返す例や慢性進行性の経過を呈した例も報告されている4。現在獣医療領域でのAIPに対する報告はない。
図1 AIPとvetARDSは、肺障害を起こす既知の疾患の有無によって鑑別診断される。病理組織所見は両方ともDADを示す。AIP:文献7、vetARDS:文献12より引用。