SP10 特発性肺線維症
- 肺の病気
病態と定義
IPFは未知の原因による肺胞上皮細胞の繰り返す損傷とその修復・治癒過程の異常が主たる病因・病態とされている1。肺の線維化は肺における炎症の病理学的終末像である。図1に間質性肺炎から線維化に至る大まかな過程を示した。線維化の過程は、様々なサイトカインや炎症性細胞などが関与しており、その過程は詳細に研究されている。しかし、その複雑で未だ解明されていない2,3
図1 肺の線維化の過程。A: 間質性肺疾患の4つの病期。間質性肺疾患では、第Ⅰ期では急性胞隔炎の発現を伴う実質細胞の傷害に特徴がある。調節因子の作用の結果、慢性胞隔炎や肺胞傷害の消退、あるいは進展がみられ(第Ⅱ期)、引き続いて間質の膠原線維による線維化が進展する(第Ⅲ期)。このような病態は、抑制されないと“終末期肺”へと進展する(第Ⅳ期)(Fulmer JD, Crystal RG. Interstitial lung disease. Curr Pulmonol 1979;1:1-65.より引用、一部改変)。B: 肺胞傷害から線維芽細胞巣か形成される過程。1:フィブリン(矢印)は過形成した肺胞上皮によって覆われ、円形の壁在性線維芽細胞が浸潤する。 2:器質化は壁在性線維性プラークを形成する。3:多くの肺胞に同時に器質化が起こると、部分的に肺胞の機能が消失することになる(Spencer H. Pathology of the lung, 3rd ed. Oxford: Pergamon Press. Ltd.; 1977.より引用、一部改変)