犬・猫の呼吸器病

SP04 猫の慢性閉塞性肺疾患(肺気腫含む)

  • 肺の病気

病態と定義

猫では不可逆性の肺過膨張をよく経験する。猫では気管支疾患/喘息(SP03 FBD/A参照)と呼ばれる気道過敏性を特徴とするステロイド反応性の可逆性末梢気道疾患があり、また経験的に上気道閉塞や中枢気道閉塞にて容易に肺過膨張を示し、犬とは異なる末梢気道病変と解剖学特徴がある。FBD/Aについては猫喘息(FA)モデルを用いた研究や自然発症例の臨床研究が進められているが、可逆性と不可逆性の末梢疾患疾患の関連については未だ明らかとなっておらず、肺過膨張の機序も説明されていない。慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は、ヒトで定義された末梢気道および肺の疾患である。肺気腫、慢性気管支炎、末梢気道病変の3つを包括する概念とされ、完全には不可逆的ではない末梢気道閉塞によって気流制限が慢性化し、換気障害が緩徐に進行していく1。高炭酸ガス血症を示すⅡ型呼吸不全を呈し、特有の呼吸管理が要求される。気腫性病変が優位なタイプ、末梢気道病変が優位なタイプ、両者混在の病型がある2。猫では、末梢気道の閉塞が潜在的に進行する可能性があり、それが不可逆性に至れば肺過膨張が慢性化し、ヒトのCOPD様の病態になりうる。その状態のことを、本研究会では猫のCOPDと定義する。犬のCOPDと同様に、ヒトの概念をそのまま当てはめてよいわけではなく、未だ学術的な分類とは言えないが、犬に比して肺過膨張を認めやすいので識別しやすく、末梢気道疾患の終末像として臨床的に位置付け、対処法を定めておくことは重要と考えられる。猫の末梢気道疾患の体系は解明中だが、BALF解析の結果とその後の治療経過の臨床経験から、図1のような分類が提案されている3。症例蓄積にて妥当性を証明する必要があるが、現時点での指針としては有用と思われる。

 

図1 猫の気管支疾患/喘息の体系的考え方の例。CBまたはBOからCOPDが生じうると推察している(文献3、p247, 図2より引用、一部改変)。

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