犬・猫の呼吸器病

L12 急性・遷延性気管気管支炎

  • 気管の病気
  • 気管支の病気

病態と定義

気管や気管支の炎症性病変によって、発症から受診まで8週間以内持続する咳を特徴とする疾患である。急性気管気管支炎は急性咳を呈し、慢性閉塞性肺疾患などの慢性肺疾患の非存在下での下気道感染症の徴候を示す臨床診断である1。したがって、慢性気道疾患を基礎とした急性増悪や喉頭疾患単独による咳は含まない。本疾患は主に犬において細菌あるいはウイルスによる気管・気管支の感染症であるが、ワクチン接種歴があり、集団飼育あるいは若齢での発症でない点から伝染性気管気管支炎とは区別して考えられている。獣医療では、2ヶ月以上持続する咳は慢性咳と明確に定義されているが2、発症から2週間以内を急性咳、2-8週間持続する場合を遷延性咳と習慣的に分類されている3。発症時期による分類である程度原因を推定できる。急性咳の原因の多くは気道の感染症であり、持続期間が長くなるにつれ感染症が原因である可能性は低下し、慢性咳においては感染症そのものが原因となることはまれである4,5(図1)。また、感染によらず急性咳が生じることもあり、この場合は急性気管気管支炎の語を用い、下気道感染症とは区別される。

図1 咳症状の持続期間と感染症による咳の比率の関係。急性咳と遷延性咳が、急性・遷延性気管気管支炎で認められる咳を含んでいる。発症から2週間以内の急性咳は感染による可能性が高く、それ以降の咳は感染症以外の原因の可能性を考慮する必要があり、すでに8週間以上続く咳は感染症以外の原因によって生じている可能が高いと考える。

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