L01 原発性気管虚脱
- 気管の病気
病態と定義
気管虚脱とは「気管が背腹方向に異常につぶれやすい状態」と定義される1。気管虚脱の発生部位は頸部気管、胸郭前口部気管、胸部気管に分けられ(図1)、気管虚脱は発生部位と呼吸相によって動的頸部気管虚脱(Dynamic Cervical Tracheal Collapse:DCTC)(34項目参照)、原発性気管虚脱(Primary Tracheal Collapse:PTC)、気管・気管支軟化症(Tracheobronchomalacia:TBM)(35項目参照)の3つのタイプに分類される2。PTC罹患犬の気管軟骨では正常犬に比べ軟骨細胞、グルコサミノグリカンなどの軟骨基質が減少していることが確認されており3、呼吸相に関わらず気管軟骨輪自体が扁平化する。気管断面の形状によりグレードⅠ〜Ⅳに分類される4 (図2)。重度PTCでは両相性ストライダー、チアノーゼなど呼吸困難を呈し、気管内ステント留置や気管外プロテーゼを用いた外科的矯正術などの積極的な治療が必要となる5-7。
図1 気管の3区分。通常気管は胸腔外気管と胸腔内気管の2つに分けられるが、気管虚脱を理解するうえでは頸部気管と胸部気管、その移行部である胸郭前口部気管の3つの部位にわけて考える
図2 気管虚脱のグレード分類。文献4より引用。グレードⅠでは膜性壁の陥入により25%までの管腔径消失;グレードⅡでは膜性壁が広くなり、50%まで管腔径消失;グレードⅢは気管軟骨輪が扁平化し気管縁が触知できるほどになり、75%の管腔径消失;グレードⅣは完全虚脱を意味し、気管は完全に扁平化して膜性壁が気管腹側壁に接する。