第19回 犬・猫の呼吸器勉強会
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第19回 犬・猫の呼吸器勉強会のご案内
日時: 令和5年2月13日(月)21:00−23:00
会場: オンライン開催
内容
1 呼吸器ミニ講義 座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
咳と心臓病についてPart1 (15分)
青木卓磨(麻布大学 小動物外科学研究室 准教授)
僧帽弁粘液腫様変性疾患(以下、MMVD)は、犬の心疾患の75%を占め、特に老齢の小型犬種に好発し、欧米の報告では犬の3~7 %が罹患するとされる。2021年での本邦の犬の飼育頭数が710万6,000頭であることを考慮すると(日本ペットフード協会調べ)、小型犬の飼育頭数が多い本邦では49万7,320頭以上の犬がMMVDに罹患していることが推定される。MMVDは、Stage A、B1、B2、CならびにDの5段階に分類され、6,102頭のMMVD罹患犬に対する観察研究では65%がStage B1(無徴候、心拡大なし)、B2(無徴候、心拡大あり)が15%、C(うっ血性心不全の既往あり)が20%であった。一方で、咳は39%の症例に認められ、必ずしも心拡大や肺水腫を伴わなかった。近年の報告ではMMVDの咳は肺水腫ではなく、左房サイズと呼吸器疾患の有無に関連するとされる。今回はMMVDと咳との関連性をお話ししたい。
2 研究班報告(診療基準班) 座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
呼吸器超音波検査についての文献レビュー (45分)
谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院)
Point Of Care UltraSound (POCUS)の普及によって迅速かつ的確に、ベッドサイドで検査を行うことが可能になってきた。POCUSには胸部に対するPoint of care検査であるThoracic
Focused Assessment with Sonography for Trauma (TFAST)とVeterinary Brief LungUltrasonography Examination (Vet BLUE)と呼ばれるプロトコールが存在する。今回はこれらのプロトコールに関する基礎的な内容と最近の知見を交えて報告する。また呼吸器超音波検査は胸部だけでなく喉頭の超音波検査に対する報告はいくつか存在する。喉頭の超音波検査は1900年代から報告されているが、喉頭疾患のゴールドスタンダードではない。喉頭の超音波検査は非麻酔下で行える非侵襲的な画像診断であるため、喉頭における超音波検査についても報告する。
3 症例報告・臨床研究 座長:飯野亮太(いいのペットクリニック)
1) COPD治療配合剤ビレーズトリ®で良好な経過が得られた猫喘息の2例 (20分)
中森正也(乙訓どうぶつ病院、京都動物医療センター)
ビレーズトリ®は抗炎症作用をもつ吸入ステロイド薬のブデソニド、気管支拡張作用をもつ長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬のグリコピロニウム臭化物、同じく気管支拡張作用をもつ長時間作用性β2刺激薬のホルモテロールフマル酸塩水和物の3成分を、1つの吸入デバイスに定量配合した吸入剤である。人医療では主に慢性閉塞性肺疾患に使用され、近年軽度の喘息に対して、ブテゾニド単独よりブテゾニドと気管支拡張剤の配合吸入剤の方が増悪を予防する効果が高いと報告されている。一方獣医療では、維持期の猫喘息の治療はフルタイド吸入を主とし、増悪時に内服のステロイドおよび気管支拡張剤の内服もしくは吸引が推奨されているのが現状であり、ビレーズトリ®を使用した報告はない。今回、猫喘息と診断した猫2例に対し、ビレーズトリ®を使用して、副作用は認められず良好な経過が得られたためその概要を報告する。
2)ノーリッチ・テリアの上気道閉塞に対し片側披裂軟骨側方化と両側楔状突起切除にて良好な転帰を示した1例 (20分)
城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
ノーリッチ・テリアは中頭種に分類され喉頭周囲に構造異常あり、上気道閉塞症候群(Norwich Terriers with Upper Airway Obstruction Syndrome; NTUAS)を示す。短頭種気道閉塞症候群と異なり、未だ治療法は確立していない。症例は、ノーリッチ・テリア、去勢雄、3歳、体重5.58kg。2歳齢時より安静時と睡眠時異常呼吸音、1週間前より常に努力呼吸が続くとの主訴で来院。NTUASおよび喉頭麻痺と診断し、第1病日に喉頭小嚢切除、左側披裂軟骨側方化術、一時的気管切開を実施し、呼吸症状は改善した。しかし、第688病日に運動時および睡眠時努力呼吸を再発し、喉頭鏡検査にて喉頭虚脱ステージ3を確認した。オーナーとの協議の上、両側楔状突起切除術の追加を試みた。現在術後4.5ヶ月を良好に経過し、飼い主評価はほぼ改善(4/5)に至っている。本症例に行なった外科療法について考察する。
連絡事項
- 非会員参加の場合、原則として事前申し込みをお願いします。2月6日までに研究会事務局(jimu@verms.or.jp)にご連絡ください
- 開場は20:30となります。入室許可手続きがありますので入室自体はお早めにお願いします。
- 入室時には、Zoom参加手順の注意事項210804に従い、Zoom-ミーティングに参加する-名前を漢字(例、城下幸仁)に書き換えてから「参加」ボタンを押してください。
- 待機室入室後、3分以上たっても承認されない場合、お手数ですが事務局046-256-4351までお電話ください。電話にて承認手続きを行わせていただきます。
- 各講演内容は研究会会員にYou Tubeにて限定公開いたします。その中のコメントを介し質疑応答可能です。
- 開催中、質問者は円滑な議論のためビデオオンでお願いします。
- 閉会後、同一会場にて23:15から歓談や飲食しながら討論会を60分程度設けます。参加や退出のタイミング自由です。症例相談があればデータ提示をお願いします。
- 勉強会の講演や議論内容は後日オンデマンド配信するため録画させていただきます。あらかじめご了承ください。演者、座長以外はビデオオフにてご参加ください。
第20回 犬・猫の呼吸器勉強会のご案内
日時: 令和5年4月10日(月)21:00−23:00
会場: オンライン開催
内容
1 呼吸器ミニ講義 座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
咳と心臓病についてPart2 (15分)
青木卓磨(麻布大学 小動物外科学研究室 准教授)
2 研究班報告(FDLD準班) 座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)
猫の特発性肺線維症に関する文献レビュー(45分)
近藤絵里子(品川WAFどうぶつ病院)
3 症例報告・臨床研究 座長:上田一徳(横浜山手犬猫医療センター)
演題募集中。2演題(各20分)まで
演題タイトルの締切は3月10日(金)となります。演題名、発表者名、所属を事務局(jimu@verms.or.jp)に連絡ください。発表者は会員である必要がありますが、共同発表者はその限りではありません。募集要項は以下の通りです。
1)症例報告:来院経緯、症状の動画データ、身体検査・血液検査・X線検査・透視検査・動脈血ガス分析などの一次検査所見、鑑別疾患リスト、CT検査、気管支鏡検査、鼻鏡検査、BALF解析や病理診断、確定診断、内科治療または外科治療、治療転帰、などの詳細データが全て揃っているもの。2)臨床研究:呼吸器学に関する知見。体裁は自由。他の学会や研究会で未発表ものとする。 1)2)とも発表10分、議論10分で合計20分。1回開催につき、1〜2演題とさせていただきます。演題やスライド資料は当サイト(会員限定コンテンツ内)で公開いたします。
用語や基準は書籍「一般臨床医のための犬と猫の呼吸器疾患」に従います。